COLUMN
コラム
“ひとりごと”が聞こえる距離感 —オフィスの音響設計と心理的安全性—
2025.11.10
オフィスは静かであるべき——そんな常識が、少しずつ変わってきています。
無音の空間は集中できるようでいて、どこか緊張感が漂うことも。
逆に、誰かの“ひとりごと”がふと聞こえる距離感には、安心感が宿ることがあります。
音は、空間の温度を決める要素のひとつ。
今回は、オフィスの音響設計が働く人の心理的安全性にどう影響するかについて、Birthの視点から考えてみたいと思います。
“ひとりごと”が生む安心感
誰かが「うーん…どうしようかな」とつぶやく。
その声が聞こえることで、「あ、みんな悩みながら働いてるんだ」と感じられる。
ひとりごとは、無意識の共感を生む音。
それが聞こえる距離感は、チームの空気をやわらかくしてくれます。
音の存在が、感情の共有を促す“非言語的コミュニケーション”になるのです。
無音がもたらす緊張感
完全な静寂は、集中を助ける一方で、緊張を生むこともあります。
「声を出したら迷惑かも」「ちょっとした雑音も気になる」——そんな空気は、働く人の心を閉じてしまう。
静寂は“発言を控えるべき”というアフォーダンス(環境が行動を誘導する性質)を生むとされ、心理的安全性を損なう要因にもなり得ます。
音の“逃げ場”をつくる
オフィスの中に、音が自然に流れる場所をつくることはとても大切。
たとえば、BGMが流れるラウンジ、少しざわついたカフェ風の打ち合わせスペース。
音環境の快適性は作業パフォーマンスにも影響し、時間帯や業務内容に応じて調整する設計が求められます。
音の“逃げ場”があることで、働く人は気持ちを切り替えやすくなります。
距離感がつくる関係性
音が届く距離は、人との距離にもつながります。
ひとりごとが聞こえるくらいの距離感は、ちょうどいい“つながり”を生む。
近すぎず、遠すぎず。そんな空間設計が、チームの関係性を自然に育ててくれます。
音響設計では、吸音材や遮音パネルの配置によって“聞こえる・聞こえない”のバランスを調整することが重要です。
音響設計も“らしさ”の一部
Birthでは、音も空間の“らしさ”をつくる要素だと考えています。
企業のカルチャーに合わせて、どんな音が心地よいかを一緒に探る。
静けさを大切にする会社もあれば、にぎやかさが似合うチームもある。
設計プロセスでは、ユーザー中心設計やインクルーシブデザインの視点を取り入れ、聴覚特性の違いにも配慮します。
まとめ:声が届くから、心もほどける
オフィスは、ただ静かであればいいわけではありません。
誰かの声がふと届くことで、安心できたり、共感が生まれたりする。
“ひとりごと”が聞こえる距離感には、働く人の心をほどく力があります。
そんな空間を、私たちはていねいにつくっていきたいと思っています。
Birthは、企業の“らしさ”と働く人の感情に寄り添いながら、音響設計も含めた空間づくりを行っています。
声が届く距離、音が逃げる場所、静けさとにぎやかさのバランス。
一緒に、“その会社らしい居場所”をつくっていきましょう。
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